EQ をかけるとヘッドホンの音が小さくなる理由
安全な EQ が小さく聞こえるのは、周波数を持ち上げる前に EQ 自身の出力を下げるためです。この余白がヘッドルームです。曲の一部を持ち上げてもデジタル上限を超えないようにします。戻すのは後段のスマートフォン音量であって、プリアンプの下げ幅ではありません。
プリアンプを先に下げる理由を計算で見る
ピークが −1 dBFS の曲に +4 dB の低域シェルフを加えるとします。簡易的なピーク確認では、−1 + 4 = +3 dBFS です。これは 0 dBFS の上限を超える可能性があります。EQ 出力を −4 dB にすると、スマートフォンの音量段階に入る前の同じ確認値は −1 dBFS になります。
この計算は慎重な出発点であり、すべての曲の測定値ではありません。フィルターが変えるのは信号の一部だけで、帯域の重なり、曲そのもの、後段の処理が実際のピークを変えます。ただし原則は変わりません。プラスの EQ はヘッドルームを使い、後から音量を上げても EQ 前のヘッドルームは作り直せません。
- 0 dBFS はデジタルサンプルの上限で、耳元の音の大きさとは別です。
- 気になる帯域をカットすれば、新たなピーク問題を作らずに解決できることがあります。
- プロファイルに推奨プリアンプ値があるなら、最大ブーストと同じだけ下げるという簡易ルールより先にそれを使います。
最初の計算を試す
曲のピーク、最大ブースト、プリアンプを変えてみます。これは意図的に単純なモデルです。処理の順序を理解してから、実際の音で結果を確かめてください。
3つの段階を動かす
これは単純なピークモデルで、曲の測定ではありません。
EQ後のピーク
-3 dBFS
残りのヘッドルーム
3 dB
推奨する開始時の下げ幅
−4 dB
ヘッドルームがある段階を探す
音源、EQ 出力、Android 音量、ヘッドホンゲインを順に追います。EQ 前のデジタル上限と、後から決める試聴音量を分けて考えられます。
音源 / アプリ
-2 dB
EQ プリアンプ
-4 dB
Android 音量
-3 dB
ヘッドホンゲイン
+4 dB
合成した相対レベル
-5 dB
残りのデジタル余裕
6 dB
良好
後段のゲインとリミッターは別の道具
出力ゲインとリミッターの上限を変えてみます。後段で新しい過負荷を作ることや、すでに起きたクリップを戻さずにピークだけ抑えることが分かります。
制限前のピーク
+4.0 dBFS
デジタル上限超過
4.0 dB
リミッターのゲイン低減
5.0 dB
追加出力ゲイン: -1.0 dBFS
次に確認すること
ブーストした EQ を推測で決めない
これはゲイン構成の確認であり、ひとつの数値が全曲に正しいという意味ではありません。
- 1
ほかの処理をフラットにする
テスト中はプレーヤー内 EQ、ヘッドホンの音響モード、2 個目のイコライザーを切ります。残すと、どのブーストがヘッドルームを使っているか分かりません。
- 2
一番大きいプラス調整を探す
最大ブーストが +5 dB で、プロファイルにプリアンプがなければ、EQ 出力はまず約 −5 dB にします。Auto EQ プロファイルの指定値は置き換えず、そのまま使います。
- 3
分かりやすい 3 か所で聴く
低音のアタック、大きなボーカル、密度の高いサビを選びます。静かなイントロより、過負荷やリミッターの働きを見つけやすい場面です。
- 4
判断前に音量をそろえる
バイパスと EQ の音量が近くなるまで通常の端末音量を上げます。音が大きい方は、音色バランスが悪くても豊かで明瞭に聞こえがちです。
- 5
音量が足りなければ要求を下げる
ブーストを下げる、競合する帯域をカットする、補正を穏やかにする、の順で考えます。アプリを大きく見せるだけのためにプリアンプ低下を全部戻さないでください。
変化から処理段階を特定する
| 聞こえること | 考えられる理由 | 次にすること |
|---|---|---|
| プリセットは小さいがきれい | プラスの EQ に合わせて出力が下がった | 下げ幅を保ち、通常の端末音量を少しずつ上げる |
| 低音のアタックでパチパチする | ブーストか後段の出力が過負荷かもしれない | フラットに戻し、ブーストを減らしてプリアンプを確認する |
| 全部大きいのに明瞭ではない | カーブが主にゲインとして働いている可能性 | 音量をそろえ、説明できる音色変化だけ残す |
| リミッターが常に動く | ゲイン問題をずっと補正している | リミッターに頼る前にブーストか出力要求を下げる |